なぜシニアUD?

このページは、運営員 柳原美紗子(日本綿業振興会ファッションディレクター、ファッションジャーナリスト)が担当します。

2013.1.17

なぜシニアUD?

vol.2

「花のサンフランシスコ」に想うユニバーサルデザイン

 

 

「花のサンフランシスコ」に想う

  ユニバーサルデザイン

 

 

「光陰矢の如し」といいますが、昨年11月8日、シニア女性に向けた「ビューティ&ハピネスフォーラム」(日本経済新聞社主催)が開催され、ユニバーサルファッション協会の今井啓子名誉会長による「ユニバーサルデザインがつくる女性の美と幸せ」と題した基調講演が行われました。

 約300人の聴衆に向けて、今井さんは講演の冒頭、名曲「花のサンフランシスコ」をBGMに、ユニバーサルデザインの精神を大変わかりやすく伝えてくれました。「花のサンフランシスコ」とは、言うまでもなくシニア世代にとって懐かしい1960年代のヒッピーソングです。「サンフランシスコへ行くなら、花を髪にさしなさい。きっとやさしい人たちに出会うはず」と訳詞を朗読され、この歌詞にはやさしさと思いやりのある社会を目指す、ユニバーサルデザインの世界が歌われていると、語りかけられたのです。
 日本は急ピッチに高齢化が進んでいます。2030年には人口の3分の1が65歳以上の高齢者になります。寿命も伸び、人生90年代時代が幕開けしています。しかもその8割以上が介護不要のアクティブシニアで、おしゃれへの関心が高く、「もっとおしゃれをしたい」と考える層は6割を超えるといいます。
 年間消費支出100兆円を超えるといわれるシニア市場ですが、衣服関連支出の優先度は実はかなり低いというのも、データで示していただきました。それは何故かと言うと、日本ではファッションというと、欧米と違い、長年にわたって若い人のものと考えられてきたからです。シニア向けマーケティングといってもすべて60歳以上でひとくくりにされているのですから、ほとんどないに等しいでしょう。サイズや形などに対して、7割もの人々が不満を持っているというのも、頷けます。感覚的にいいと思ったデザインでも、体に合わないといったことが多いのです。
 こうした現状に、今井さんは警鐘を鳴らされます。そしてここにはビジネスの芽がいくつも眠っているといいます。
 私たち自身も「もう歳だから」とあきらめないことが肝心です。年齢を重ねても「キレイ」と言われたい女心は誰しも同じ。それには「鏡を二枚用意して自分自身をよく見ること。これがおしゃれ感覚をみがく第一歩」と話されました。
 ファッションは、それを身につけることができるというだけでワクワクする、楽しいハッピーな気分にさせられるものです。その心が元気を、美しさをつくります。ユニバーサルデザインは、そうした心を生み出せる思いやりのデザインなのです。
 講演を聞いて、多くの方が髪に花をさして、サンフランシスコへ行ってみたくなったのではないでしょうか!